オルゴール円板の読取りシステムについての説明

1) 趣旨と経緯

私は過去10数年に亘り アンティークオルゴール用の円板(ディスク)から楽曲データを読み取るシステムを開発してきました。

何故なら アンティークオルゴールの華麗で荘厳な曲は現代の人々にも十分に聴き応えがあり、さらに技法的にも作品としても一流の地位を保ち続けていると考えるからです。

また その種類も楽曲数も膨大な数が作られ そのかなりの部分が現代にまで保存されてきています。 それはオルゴールが当時(19世紀末から20世紀初頭)の最先端の音楽記録再生システムであり その地位は現在のCDなどのレーベル会社のそれに匹敵するとも言えるほどの隆盛を誇っていたためでしょう。 つまり優秀な編曲家やエンジニアが数多く携わっていたことは容易に想像されるところです。

しかし 残念ながら当時隆盛を誇ったオルゴールメーカーはすべて消え、現在残っているオルゴール本体と円板は大部分が100年ほど昔当時のものなのです。 つまり朽ち果ててしまえばそれで終わりという状況にもあると言えます。

世界にはこういった時代のオルゴールをアンティークオルゴールと呼び 珍重する方が多く 今でも大切に保存、活用されてきてはいます。 ただ それでもこの先数百年単位で考えるとその保存状態が維持されるとは考えにくい面もあります。

 

そこで 私はこれら優秀で価値の高い当時のオルゴール楽曲を円板から読み取り デジタルデータ化することにしました。

 

一旦 デジタルデータ化してあれば それは記録が消滅しない限り 永久にそのエッセンスを保持することが可能です。

 

しかも 副次的効果として 当時の楽曲の内容を読み解き、その技法等を研究することも可能になります。 繰り返しますが当時の優秀な第一線の方々の「作品」とも言える楽曲を現代の編曲家に受け継ぐことができたなら これはこれですばらしいことではありませんか。

そんな訳で これまでアンティークオルゴールの円板を読み取ってデータ化するシステムを開発してきたという次第です。

 

2) システムの構成

 

システムは次の要素から成り立っています。

 

a) ディスク読み取りマシン

b) マシンの制御ソフトウェア 及び データ変換ソフトウェア

c) データ編集ソフトウェア

d) シミュレーション演奏ソフトウェア

f) 円板へのパンチングシステム

 

それぞれについて説明していきます。

 

a) ディスク読み取りマシン

 構想を具体的に実現できたのは2010年のことでした。 アンティークオルゴールの円板は非常に沢山の種類があり そのすべてにユニバーサルに対応した読み取り機を作ることは非常に困難であったため まずは15-1/2インチ( 約40cm径 )の円板に特化して読み取ることのできるマシンとして開発しました。

 機能としては ディスクをマシンにセットし回しながら光で円板にあいている穴の部分の位置(角度)を読み取っていきます。 円板を1周させると完了です。 時間的に約2分〜3分で読み取ることができます。

 穴の部分を読み取ると書きましたが 円板はそのすべてが突起を形成するために穴があきますので それを利用している訳です。 穴の突起のある側の端が読み取るべき角度位置になります。

 1周で読み取りが完了するに すべてのトラック分の光センサーを装備しています。  トラックとはオルゴールでいう櫛歯をはじく位置を指し、 15-1/2インチの円板では76箇所あります。 これをオルゴールの世界では”76弁”と呼びます。 ほかの規格の円板では54弁、159弁など沢山種類があります。  今回は76弁ですので76個のセンサーを備えているという訳です。

 

...以下 後日 ...

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